日本では従来、買い物やレストランでの支払い手段において、現金やクレジットカードを使用することが一般的でした。しかし近年、日本を含む世界各国で新たな決済方法として暗号資産(仮想通貨)が注目されています。
すでにさまざまな分野において暗号資産決済は導入されており、大手ECサイトでの商品購入から、一部のカフェやレストランでの飲食代金の支払い、公共交通機関の乗車券、さらにはエンターテイメント分野まで、実用化の事例は着実に増加しています。特にビットコインカジノなどのデジタルコンテンツ分野では、国際送金の手間や為替変動のリスクを回避できる暗号資産決済が、標準的な選択肢として定着しつつあります。
このように、日常決済の手段を大きく変革する暗号資産の高速決済ソリューションについて、本記事では詳しく解説します。
日本における暗号資産決済の現状
現金払いが主流であった日本ですが、すでに一部の大手小売店やサービスが暗号資産での支払いに対応しています。たとえば、大手家電量販店のビックカメラでは、2017年から全国の店舗でビットコイン決済を実現しています。
また、フリマアプリ大手のメルカリも、昨年2月からアプリ内の商品購入時のビットコイン決済を導入。開始1ヶ月で10万回を超える利用実績を達成しています。
さらに、不動産大手のオープンハウスグループも2025年1月からビットコインやイーサリアムによる不動産取引を開始。海外投資家の利便性向上を図っています。
地方においても、たとえば石川県の北國銀行は2024年4月から地域型ステーブルコイン「トチカ」を発行し、地元の飲食店や観光施設で利用可能にしました。この取り組みは、日本円と連動したステーブルコインによる地域経済活性化を目的としています。
暗号資産決済が広がる理由
ビットコインのような主要な暗号資産は、従来のメインネットワークでは処理能力に制限があり、取引が集中すると送金速度の低下や手数料の高騰が起きることがありました。
このことが日常的な少額決済での普及を妨げる要因となっていましたが、近年登場したライトニングネットワークや、イーサリアムのレイヤー2ソリューションなどがこの問題を解決。取引を高速化し、手数料の大幅削減を実現しています。。
特に、ライトニングネットワークはビットコイン取引を即時処理できる仕組みであり、小額の取引でも低コストで瞬時に完了できます。この技術の導入で、たとえばビットコインを法定通貨とする中央アメリカのエルサルバドルでは、マクドナルドやスターバックスでもビットコイン決済が可能になるなど、日常生活での利用が広がっています。
また、レイヤー2技術を活用したイーサリアム系暗号資産でも、オンラインゲームやNFTマーケットプレイスでの小額決済に利用が進んでいます。これらのサービスは特に若い世代に人気があり、日本でもゲームセンターやデジタルコンテンツ販売で暗号資産決済を採用する動きが見られます。
暗号資産決済の特徴
暗号資産決済の最大のメリットは、なんといっても即時性と低手数料です。たとえば、海外から日本を訪れる際、為替の影響や両替手数料を少しでも抑えるために、日本への旅行にお金を持って行く方法に悩む人は多いでしょう。しかし、暗号資産を活用すれば、両替の手間が省け、ATMでの引き出し手数料を避けることができるのです。
また、国際送金も銀行を経由するよりはるかに速く、手数料も極めて安価になるため、観光客にとって便利な支払い方法となります。
さらに、プライバシー保護の観点からも暗号資産決済は優れていると言えます。たとえばクレジットカード決済では、カード情報の漏洩リスクがありますが、暗号資産決済ではウォレットアドレスのみで取引が完結します。つまり、個人情報を開示する必要がないため、プライバシーを重視する人にとって大きなメリットとなるでしょう。
加えて、暗号資産の利用は非接触型であるため、感染症対策の観点からも衛生的な利点があると言えそうです。
暗号資産決済の注意点
一方で、暗号資産決済には課題もあります。主な課題としてまず挙げられるのが、ボラティリティの高さです。数日で価値が大きく変わる可能性があるため、特に高額商品の購入時には注意が必要となります。
また、セキュリティ面のリスクも存在します。たとえば、一度送金するとキャンセルや返金が難しくなるため、送金先の確認は慎重に行う必要があります。
さらに、ウォレット管理においても、二段階認証の設定や不審なリンクのクリック防止など、基本的なセキュリティ対策が欠かせません。そのため、暗号資産の取り扱いに慣れていない人は、実績のある大手が提供する、もしくはユーザー評価の高いウォレットの使用を検討すべきでしょう。
海外での暗号資産決済の先進事例
アメリカやヨーロッパでは、暗号資産専用のプリペイドカードやデビットカードが普及しており、日常的な買い物やオンライン決済を暗号資産で行うことが日常的になりつつあります。
中でもスイスやドイツでは、公共交通機関や自動販売機でも暗号資産決済が導入されており、市民の生活に自然に溶け込んでいると言えるでしょう。
日本における規制状況と今後の見通し
日本は暗号資産に対して比較的進んだ法整備を行っており、2017年から暗号資産交換業が金融庁の規制対象となっています。取引所は顧客の資産を安全に管理する義務があり、ユーザー保護が進んでいます。
現在、日本政府はWeb3技術の活用促進や、少額暗号資産決済の非課税化を検討するなど、暗号資産決済をより日常的なものにするための施策を検討しています。最近では、暗号資産取引にかかる税率を一律20%に引き下げる議論も進んでおり、投資家や利用者の負担軽減に向けた動きが活発化。日本国内での暗号資産決済の普及がさらに加速することが期待されています。
他にも、2023年に改正された資金決済法により、ステーブルコインの発行と流通に関する法的枠組みが整備されたことで、銀行や資金移動業者によるステーブルコインの発行が可能に。これにより、安全で透明性の高い暗号資産決済の基盤が整いつつあります。
さらに、日本銀行もデジタル円(CBDC)の実証実験を進めており、将来的には中央銀行デジタル通貨と民間の暗号資産が共存する形で、キャッシュレス社会が加速することも予想されています。特に、今年4月より開催予定の大阪・関西万博では、さまざまなデジタル決済手段のショーケースとなることが期待されており、暗号資産決済の実証実験も計画されています。
まとめ
日本における暗号資産決済は、すでに実用化例があるように、技術的な進歩と法整備によってさらなる日常利用への可能性が広がっています。そして、決済の即時性や低手数料といった利便性の高さによって、新しい決済手段としてさらに受け入れられていくでしょう。
ただし、本記事で解説したように、価格変動リスクやセキュリティの課題などをよく理解し、慎重に利用することが大切です。近い将来、暗号資産による決済が日本でさらに身近になる可能性があるため、早い時期から暗号資産決済の基本を押さえておきましょう。